「CPAPが続けられない」人へ|睡眠時無呼吸症候群とマウスピース治療という選択肢

この連載には、私たち歯科の立場から見ても「まさにここを知ってほしい」というポイントが詰まっていました。今回はその内容をご紹介しながら、歯科でできるサポートについてお話しします。
① いびきは、自分では気づけない

菅さんが最初にご自身のいびきを自覚したのは22歳のころ。車内で昼寝をしていて、顔にのせた雑誌に自分のいびきが跳ね返り、「爆発音か」と跳び起きたそうです。地方の仕事で先輩芸人と相部屋になった際には、揺り起こされて部屋を追い出され、廊下で寝たというエピソードも語られています。
子どものころから家族に指摘されていたものの、20代は体力もあり、深刻には受け止めていなかったといいます。いびきは、本人がいちばん気づきにくい症状です。ご家族からの指摘は、大切なサインだと考えてください。
② 検査で判明した「重度」の数字

30代になって疲れが抜けなくなり、睡眠専門クリニックで1泊の検査入院を受けたところ、診断は重度の睡眠時無呼吸症候群でした。
- 1時間あたり45回呼吸が止まっていた(30回以上で重症とされる)
- 最長で2分40秒、無呼吸が続いていた
- 原因は「顎が小さく、就寝時に舌が下がって気道をふさいでいる」こと
担当医からは「エベレストのベースキャンプにいるのと同じぐらい、体内の酸素が足りない状態」「このまま治療をしないと寿命は10年ぐらい短くなる」と告げられたそうです。
菅さんは長年、いつも眠気があり、頭痛もひどく、鎮痛薬が手放せなかったとも語られています。「疲れが取れない」「朝の頭痛」は、SASのサインであることがあります。
③ CPAPは効いた。でも続けられなかった

治療として始めたのがCPAP(シーパップ)。マスクから空気を送り込んで気道を広げる、SAS治療の中心となる方法です。
初めて使った翌朝、菅さんは「驚くほど頭がすっきりした」「今まで、ちゃんと寝たことがなかったんだな」と実感したといいます。効果はしっかり出ていたわけです。
ところが、その快眠は長く続きませんでした。
- 「ドライヤーの弱風を口に吹き込まれている」ような感覚
- 「ブオーン」という送風音
- 寝返りを打ってもついてくるチューブと機器
眠って1時間半ほどで無意識にマスクを外してしまうことも多く、1年以上続けたものの限界に。治療をやめると症状は戻り、体の重さも頭痛もぶり返しました。数年後に再開しても、やはり長続きしなかったそうです。
CPAPが続かないのは、めずらしいことではありません
ここが、今回いちばんお伝えしたい点です。
CPAPは非常に効果の高い治療です。中等症から重症のSASでは第一に検討される方法で、正しく使えれば無呼吸はほぼ抑えられます。
一方で、菅さんのように「効果はあるのに、使い続けられない」という方は決してめずらしくありません。装着感、音、乾燥、旅行や出張時の持ち運び——理由はさまざまです。
大切なのは、「続けられなかった=治療をあきらめる」ではないということ。無治療の状態が続くと、日中の眠気による事故のリスクだけでなく、高血圧・不整脈・心疾患・脳卒中・糖尿病などとの関連も指摘されています。
歯科からできること:マウスピース(オーラルアプライアンス)

その選択肢のひとつが、歯科で作る口腔内装置(オーラルアプライアンス/OA)、いわゆるスリープスプリントです。
仕組み
上下の歯にはめるマウスピースで、下あごをわずかに前方に保持した状態で眠っていただく装置です。下あごが前に出ると、それに伴って舌の付け根も前方に移動し、のどの奥の空間が広がります。
菅さんが説明を受けた「顎が小さく、寝ている間に舌が下がって気道をふさぐ」という状態は、まさにこの装置が理屈のうえで働きかける部分です。
CPAPにはない利点
- 電源もチューブも不要。装置はマウスピース1つだけ
- 音がしない。同室の方に気を使わずに済みます
- 小さくて軽いので、旅行・出張・入院・災害時にも持ち運べます
- 装着の違和感が比較的少なく、続けやすい方が多い
正直にお伝えする限界と副作用
もちろん万能ではありません。
- 重症例では、効果がCPAPに劣ることがあります。主な適応は軽症〜中等症です
- 使い始めにあごの疲れ・顎関節の違和感、歯の痛み、唾液が増える/口が渇くといった症状が出ることがあります。多くは慣れとともに落ち着きます
- 長期間の使用で、噛み合わせがわずかに変化することがあります。定期的なチェックが欠かせません
- 残っている歯の本数や歯周病の状態によっては、作製できない場合があります
- 中枢性の睡眠時無呼吸には適応がありません
「一度作って終わり」ではなく、効果と噛み合わせを見ながら調整を続けていく治療だとお考えください。
保険は使えますか?
医科(内科・耳鼻科・睡眠外来など)で睡眠時無呼吸症候群と診断され、紹介(診療情報提供書)を受けている場合には、健康保険で作製できます。
逆に、検査を受けていない状態や、単なるいびき(無呼吸を伴わないもの)の場合は保険適用外となります。まずは医科での検査・診断が出発点です。検査を受けていない方には、検査可能な医療機関をご案内しています。
舌下神経電気刺激療法という選択肢も

連載の第4回では、菅さんが実際に受けた舌下神経電気刺激療法が紹介されています。
鎖骨の下などに装置を埋め込む手術を行い、舌の動きをつかさどる神経に電気刺激を与えて舌を前に出させ、気道がふさがらないようにするという方法です。菅さんは順天堂大学附属順天堂医院で、2024年春に相談し手術を受けられました。
適応には「CPAPを継続できない」「肥満体ではない」といった条件があり、実施できる医療機関も限られます。手術(菅さんの場合は約2時間)と、その後の入院・調整が必要です。
ちなみに、担当医から「二度と電気ショックを使ったゲームに参加できなくなります。芸人として致命的では?」と真顔で確認されたそうですが、菅さんは「全く致命的ではなかった」と振り返っています。
いずれにせよ、SASの治療は年々選択肢が広がっているということです。
大切なのは「続けられる方法」を見つけること
睡眠時無呼吸症候群の治療は、毎晩続けてこそ意味があります。どれほど効果が高い治療でも、続けられなければ効果はゼロです。逆に、効果がやや穏やかでも、毎晩きちんと使えるほうが結果的に体を守れることもあります。
- CPAPが合っている方は、CPAPを続けるのが最善です
- CPAPがどうしても続かない方は、マウスピースを併用したり、切り替えたりする方法があります
- 旅行や出張のときだけマウスピースを使う、という使い分けも可能です
「合わないからやめた」で終わらせず、主治医の先生と相談しながら、次の手を探していただきたいと思います。
こんな症状があればご相談ください

- 家族にいびきを指摘された、呼吸が止まっていると言われた
- 日中の強い眠気がある。会議中や運転中に眠くなる
- 朝起きたときに頭痛がする、口が渇いている
- 寝ても疲れが取れない、何度も目が覚める
- CPAPを処方されたが、使えていない・やめてしまった
とくに最後の項目に当てはまる方は、ぜひ一度ご相談ください。歯科でできることがあるかもしれません。
まとめ
- 菅良太郎さんの連載は、いびきの自覚しにくさとCPAPが続かない現実をリアルに伝えています
- CPAPは効果の高い治療ですが、続けられない方は少なくありません
- 歯科で作るマウスピース(オーラルアプライアンス)は、有力な選択肢のひとつです
- 保険で作るには、医科での診断と紹介が必要です
- 舌下神経電気刺激療法など、治療の選択肢は広がっています
- いちばん大切なのは、毎晩続けられる方法を見つけること
いびきや日中の眠気が気になる方、CPAPが続かずお困りの方は、左京山歯科・矯正歯科クリニックまでお気軽にご相談ください。
左京山歯科・矯正歯科クリニック
名古屋市緑区左京山449 TEL:052-623-3300
参考:ヨミドクター(読売新聞)「一病息災」[菅良太郎さん]睡眠時無呼吸症候群(1)〜(4)


















