糖尿病・高血圧があってもインプラントはできる?全身疾患との関係を歯科医師が解説

※この記事は、受診や治療方針を検討するための参考情報を目的としています。実際の診断・治療の可否は、患者さん個々の状態によって異なります。必ず歯科医師および内科等の主治医にご相談ください。
結論からいうと、持病があっても、その状態が適切にコントロールされていれば、インプラント治療を受けられる可能性は十分にあります。大切なのは「病気があるかどうか」よりも、「その病気がどれだけ管理されているか」です。
この記事では、全身疾患とインプラント治療の関係について、代表的な疾患ごとにわかりやすく解説します。
なぜ全身疾患がインプラントに影響するの?

インプラント治療は、顎の骨に人工歯根(チタン製のネジ)を埋め込む外科手術です。そのため、以下のような全身的な機能が治療の成否に深く関わります。
- 傷の治り(創傷治癒):手術後の骨や歯肉が正常に回復するかどうか
- 感染への抵抗力(免疫機能):細菌感染を防ぐ力
- 出血と止血:手術中・手術後の出血コントロール
- 骨との結合(オッセオインテグレーション):インプラントが骨にしっかり固定されるプロセス
全身疾患によってこれらの機能に影響が出る場合、インプラントが骨に定着しにくくなったり、感染リスクが高まったりすることがあります。ただし、多くの場合はコントロール状態と内科主治医との連携で対応が可能です。
糖尿病とインプラント

糖尿病は、インプラント治療において最もよく相談を受ける全身疾患のひとつです。
糖尿病がインプラントに与える影響
血糖値が高い状態が続くと、以下のような影響が出やすくなります。
- 白血球の働きが低下し、感染に対する抵抗力が落ちる
- 血管の機能が低下し、創傷治癒(傷の回復)が遅れる
- 骨の代謝が乱れ、インプラントと骨の結合が妨げられることがある
コントロール状態による判断の目安
糖尿病の方のインプラント適応は、血糖コントロールの指標であるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値を参考に判断します。HbA1cとは、過去1〜2ヶ月の血糖の平均的な状態を示す検査値です。
| HbA1cの目安 | コントロール状態 | インプラントの可否 |
|---|---|---|
| 6.9%以下 | 良好 | 多くの場合、治療可能 |
| 7.0〜8.0% | やや不良 | 内科医と連携しながら慎重に検討 |
| 8.0%超 | 不良 | コントロール改善後に再検討 |
上の表はあくまで目安です。HbA1cの値だけで治療の可否が決まるわけではなく、個々の状態によって判断は変わります。罹患期間・合併症の有無・服用中の薬なども含め、内科の主治医と連携しながら総合的に判断します。
高血圧とインプラント

高血圧がインプラントに与える影響
高血圧自体がインプラントの骨への定着を直接妨げるわけではありませんが、手術に際して以下のような点に注意が必要です。
- 手術中の血圧上昇による出血リスクの増加
- 降圧薬の種類によっては、止血に影響するものがある
- 強いストレスや緊張で血圧がさらに上昇するリスク
血圧のコントロール状態による判断
一般的に、収縮期血圧(上の血圧)が180mmHg未満、拡張期血圧(下の血圧)が110mmHg未満であれば、通常の歯科外科処置が可能とされています。降圧薬で血圧がコントロールされている方は、多くの場合インプラント治療を受けることができます。なお、上記の数値はあくまで目安であり、個々の状態によって対応が異なります。
📌 服用中の薬について必ず申告してください
降圧薬の中には、インプラント治療の注意事項に関わるものがあります。また、血液をさらさらにする抗凝固薬(ワーファリン、アスピリンなど)を服用している方は、手術前に主治医への確認が必要になる場合があります。お薬手帳をご持参いただくと確認がスムーズです。
骨粗しょう症とインプラント

骨粗しょう症は骨密度が低下する疾患で、特に閉経後の女性や高齢の方に多くみられます。インプラントは顎の骨に埋め込む治療のため、骨の状態は治療の成否に直結します。
特に注意が必要な薬:骨吸収抑制薬
骨粗しょう症の治療で処方されるビスフォスフォネート製剤やデノスマブ(骨吸収抑制薬)を使用している方は、インプラント治療に際して特別な注意が必要です。これらの薬を使用中に顎の骨に外科処置を行うと、まれに「顎骨壊死(がっこつえし)」が起きるリスクがあります。
ただし、これらの薬を使用しているからといって、必ずしもインプラントができないわけではありません。服用期間・投与方法(飲み薬か注射か)・休薬の可否など、主治医と相談しながら判断できるケースがあります。「使っているから無理だろう」と最初から諦めず、まずはご相談ください。
⚠️ 骨吸収抑制薬を服用中・服用歴のある方へ
骨粗しょう症・がんの骨転移などでビスフォスフォネート製剤やデノスマブを使用している、または過去に使用していた方は、インプラント治療前に必ずその旨をお申し出ください。内科・整形外科の主治医と連携した上で、治療の可否と時期を慎重に判断します。骨密度そのものが低い場合でも、骨造成手術(骨を補う処置)との組み合わせで対応できるケースがあります。まずはご相談ください。
その他の全身疾患とインプラント

以下は、インプラント治療の際に確認が必要な代表的な全身疾患・状態の一覧です。
| 疾患・状態 | 主な注意点 |
|---|---|
| 心臓疾患(狭心症・心筋梗塞など) | 抗凝固薬の服用確認、手術時の循環管理が必要。安定していれば多くは対応可能 |
| 腎臓病 | 腎機能低下により薬の代謝に影響が出ることがある。内科医との連携が必要 |
| 免疫抑制剤の使用(臓器移植後など) | 感染リスクが高まるため慎重な対応が必要。主治医と要相談 |
| 喫煙 | インプラントの失敗率が有意に上昇する。術前からの禁煙が強く推奨される |
| 妊娠中 | 外科処置・X線撮影・薬の使用に制限があるため、出産後に治療を行う |
持病があるからこそ、正確な情報共有が大切

持病をお持ちの方がインプラント治療を安全に受けるために、最も重要なのは「正確な情報をすべて申告していただくこと」です。
- 現在服用しているすべての薬(市販薬・サプリメントを含む)
- 過去に受けた手術・入院歴
- 現在治療中・経過観察中の疾患
- かかりつけ医(内科・整形外科など)の名前と連絡先
「歯のことだから関係ないだろう」と思って申告しなかった情報が、治療の安全性に大きく影響することがあります。問診票には正確にご記入いただき、気になることはカウンセリング時にご相談ください。
当院では必要に応じて内科などの主治医と情報共有・連携を行い、患者さんが安心して治療を受けられる環境を整えるよう努めています。
まとめ
- 糖尿病・高血圧・骨粗しょう症があっても、コントロール状態が良好であればインプラントを検討できるケースは多い
- 骨吸収抑制薬(ビスフォスフォネートなど)の服用歴がある場合は、必ず事前に申告が必要
- 持病の「有無」より「コントロール状態」と「主治医との連携」が重要
- 服用中の薬・既往歴はすべて正確に申告することが安全な治療につながる
名古屋市緑区の左京山歯科・矯正歯科クリニックでは、持病をお持ちの方のインプラント相談も承っています。「自分の状態で受けられるか」「何を準備すればいいか」など、まずはカウンセリングでお気軽にご相談ください。


















